今から数年前、日本の母からいつものようにパッケージが届いたある日のこと。
ぎっしり詰まった日本のお菓子やレトルト食品、調味料・・これは私たちにとって最も楽しい時間でした。でもその日はちょっとおまけが・・!
「ママこれ、僕の?」
それは水色のストライプの大きな、大きなYシャツでした。
「着てみたい!」とはしゃぐ息子でしたが、どうみてもこのサイズは・・なあ。
母に届いたことをTELで報告した際に、そのシャツが叔父のものだと分かりました。
おじさん・・・。私の母の弟で、彼のあだ名は「大きい叔父さん」でした。(そのまんまだ~)叔父さんはなかなかダンディな人で、ギターを弾いたり、外国語を勉強したり・・とっても多彩で素敵な人でした。そして何より奥さんと2人の娘さんをとても大切にしていました。
そう・・、誰よりも大きく元気だった叔父さんが、まさか40代の若さで亡くなるとは、誰も想像できませんでした。今から10年程前、彼が癌だと聞かされたとき
とってもショックで眠れなかったのを覚えています。
その日パッケージに入っていたのは、大きいおじさんの形見でした。
おしゃれだったおじさんが持っていた他のシャツは、以前母が全部切ってパッチワークでベッドカバーを作ったのを知っていましたが、そのシャツは残された1枚だったのです。
ブカブカのシャツをひきずりながら、無邪気に走り回る息子・・。ふふ。
でもさすがに自分のではないと気がついたようでした(笑)。
「これ、誰の?」
それはね・・・・、と言いかけると心の中にいろいろな想いが溢れてきました。
おじさんにこの子を会わせたかったなあ。いっぱい遊んでくれたなあきっと・・。
そのときそれが誰のものか、説明しましたが、もちろん3歳の子にとっては「ふ~ん」で終わりです。知らない人だもんな・・ちょっぴりさみしいな。
その後、このブカブカのシャツを着ている息子の写真と、おじさんの思い出の写真を使ってミニブックを作りました。当時、あまりそれまでミニブックには興味が薄かったのですが、このときは伝えたいことがはっきりしていたこともあり、面倒くさがりの私が厚紙を何枚も切り、3日ほどで仕上げました。(やればできるのね・・・いつもこうならいいのに)
きっともっと大きくなったら、それを読んでおじさんがどんな人だったか、知ってくれるだろうと願っています。写真がどこかにあるはずなのですが・・・見つかり次第、載せますね。
さて、あれから時が経ち・・・先日、結婚式に行ってきました。
わたしのいとこのです。数年前私の結婚式に来たときはまだ高校生だったYちゃん。とってもきれいな花嫁さんでした。(んー、私も年取ったわ・・)
Yちゃんは、このおじさんの娘さんです。おじさんの亡くなったときはまだ6年生だった彼女。悲しみを乗り越えて、おばさんと2人の娘さんが助け合って仲良く生活してきました。
きれいな花嫁さんになったYちゃんを見て、私たち誰もが「おじさんがここにいたらなあ・・」と思いました。きっと天国から微笑んでくれていることでしょう・・。
さて、家族で写真撮影を終えたときに、Yちゃんが私のところへきました。
「実は、00君にリングボーイをやってほしいのだけど・・・」
うちの息子が・・・リングボーイ?リングボーイとは、バージンロードを歩く花嫁さんの前を神父さんの所までリングを運ぶ・・というなかなかの大役です。
う・・大丈夫かしら。
本人に聞くと、結構やる気のようでした。
それなら・・・と、説明を聞きに行きました。
他の人はチャペルにみんな着席していました。息子は花びらの中に置かれたきれいなリングボールをもって誰に渡すのか、そして一番大事なのはゆっくりゆっくり歩くこと・・などと何度も係りのお姉さんに説明されました。
ドキドキ・・・。私がドキドキしても仕方がないのですが(笑)、大丈夫かしら。
息子は「できるよ」と結構はりきっているようでしたので、まあこれも経験・・と私も楽しみにカメラを構えていました。
さあ、ついに本番!
リングを持って先頭に立つ息子はちらっとこっちを見ました。
ちょっと緊張している様子でしたが、そんな姿を見ていると不思議でもありました。
会ったことはなくても、この子はあの大好きな叔父さんと血がつながっているものね。
おばさんとYちゃんが腕を組んでいる前にちょこっと立っている息子を見て、心の中で「おじさん~、見てますか~!私の息子がおじさんの代わりに一緒に歩くよ~」と思っていました。
・・と、ここまでは感動していたのです。
しかし、残念ながらこのお話は実はここで微笑ましくは終わらないのです・・・。
ハプニングが起きたのはその直後。
音楽が鳴り始め、聖歌隊がいっせいに歌い始めてドアがバターンと開きました。
私は息子が歩き始めたのを後ろから見送って、さて私も席につこうか・・・と思ったとき、係りの人が「お母様!お母様!早くこっちに来てください!息子さんが、泣き出しそうです!!」と慌てて私を呼びにきました。
・・・・あちゃー・・・・。
予期していなかった大きな音楽と、ドアが開いたとき大勢のひとが一揆に後ろを向き注目され、そのプレッシャーに耐えられなかったのか・・・大粒の涙をいっぱいにため、今にも「わーん!!」と泣いて逃げ出しそうな息子を、一生懸命「こっちだよ!おいで!大丈夫だよ!えらいよ・・・」と手を伸ばし必死に励ます神父さん(笑)。
しかし、事態はさらに悪化。
お兄ちゃんが泣きながら歩く姿を見て、爆発してしまったのがなんと娘。
「うわーーーーーーんんんん!!」と泣き崩れて、主人に連れられて退場。(トホホ)
私は焦りながらもそんな娘を横目に、前に回って息子を励ましました。
「頑張れ、あともう少し!」
こぼれる涙をボロボロ流しながらも、なんとか頑張って最後まで歩き、神父さんにリングボールを渡しました。
・・・・よかった・・・。ホッ。
Yちゃんの結婚式の一番感動の場面をとっても見たかったけど、子供たちのことを思って(そして周りのことも・・)外にでました。
頑張ったね・・。ちょっぴり申し訳なさそうに黙って泣く息子。
その横でお兄ちゃんの泣く姿を見てわけが分からず一緒に泣く娘。(しかも本人よりも大音量)
その後、披露宴では多くの人から「頑張ったね~。えらかったね」「かわいかったよ!」「お兄ちゃんのこと心配で妹さんも泣いちゃったのねえ」などと声をかけていただきました・・・。
お騒がせいたしました・・・。
披露宴では、今までの思い出の映像で叔父さんの元気なころの姿がでると、私たち家族は涙が止まりませんでした。でも悲しみの涙ではなく、喜びとそしておじさんへの愛の気持ちだったと思います。お父さんとお母さんと同じ結婚記念日を選んで結婚したYちゃん。
仲が良かったお2人のように、素敵な家庭を作っていくと思います。
それにしても・・・最近の結婚式はすごいですね~!
披露宴の終わりにはその日の結婚式のハイライトの全てがコブクロのあの歌と共にドラマチックに映像として流れました。
もちろん・・・・泣きながら大役を果たした息子の姿もばっちり映っていました。どっと会場が沸きましたが・・・。あは。
今となっては良い思い出です。
あのミニブックが見つかったら、最後のページにこの写真を足しておこうと思います。
ちなみにこの写真は誰かが後でくださったものです。私はシャッターチャンスを狙うような余裕はなかったですから・・ね(笑)。